三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

美女の生涯

 女にとって魅力的な容姿に生まれつくのは、危険なことでもある。女性の美貌は、現在日本社会に限らず、古今東西の人類文化で共通に、莫大な価値を持つ。だが、若いうちに安売りするとデートレイプの結果「農業高校の番長の女」(注1)に身を落としかねない。ストーカーやDVの被害可能性は当然。殺される可能性すらある。早ければジョンベネちゃんのように、わずか6歳で。

 親に相応の財力があり、本人に人並みの学力があれば、小中学校から「良い学校」に進み、「番長」とも「ヤンキー」とも無縁の環境で、人並み以上の学歴をゲットすることも可能だ。「女学校出て嫁入り」が当然だったのは石器時代の話。一流大学に進学すれば、大手企業やマスコミなど人気業種への就職の道も拓ける。さらに美貌があれば、望むところに職を得ることが可能だろう。就職後は、収入も消費生活も、同年輩の女性はもちろん、男性平均をも軽く凌ぐことになるが、そうなると同年輩の男性との恋愛は逆に難しい。たちまちのうちに20代が過ぎ去っていく。

 アラサー美女の「上がり」の一つが、年上の富裕層男性との結婚だ。実業家、資産家、開業医その他。専業主婦の「奥様」に納まって、30代でこどもを産む。十分に「あり」だろうが、自分自身のキャリアが虚しくなったことを、どう受け止めるかという問題が残る。旦那は90%の確率で浮気するが、それをどう丸く収めるかも奥様の重要課題。

 同年輩の「エリート」と結婚するのが、手堅い「上がり」。結婚、出産後も共働きで相当の資産を形成できるし、自分のキャリアも全うできる。旦那の浮気も、離婚も可能性が低い。仕事が超多忙で、そんなことやってる余裕がない。地味だが堅実な「上がり」である。

 芸能人、スポーツマン…歌舞伎役者や相撲取りとの結婚もあるが、まず確実に破綻する。離婚後の人生は波乱万丈だ。それはそれで楽しいかもしれない。→「40代美女」へ進む。

 明らかな失敗例が「長期化する不倫関係」。相手が富裕層なら、相当の経済的援助が期待できるが、こどもは産めない。→「40代美女」へ進む。

 もう一つの失敗例が「DVセックス依存症」。「野良女」(注2)の桶川みたいなの。若いヤンキーをとっかえひっかえ、どれも1年と続かない。疾風怒濤の30代を経て、→「40代美女」へ進む。

 身持ちは固く、結婚相手の目標水準あくまで高く、結果、恋愛すらできずに30代を過ごす。趣味や性格が、恋愛を疎外する場合も珍しくない。腐女子であるとか、家事処理能力ゼロで汚部屋の住人と化しているとか。職場では「残念美人」と陰口を叩かれている。→「40代美女」へ進む。

 で、「40代美女」となる。芸能人との結婚&離婚、富裕爺との不倫、ヤンキーとの乱倫、2次元相手の不毛と、これまでの人生で、それぞれに不幸な恋愛関係を重ねてきた。キャリアはしっかり。年収高く、住まいは持ち家マンションで、資産もそこそこ。若い頃の情熱は冷め、良くも悪くも「落ち着いて」きた。結婚はともかく、年齢的に出産はラストチャンスだ。

 ここで「同年輩との結婚」をゲットするのが、残された「上がり」。相手はエリートじゃない。自分より収入が低いし、背も低く太ってて禿げてるかもしれない。でも、10年遅れで「堅実路線」の最終列車に乗れる。不妊治療が必要かもしれないが、こどもを産める可能性も十分ある。

 以下はバットエンド。

 人生の秋風を感じ始めている「40代美女」に食いつくのが「若いホスト」だ。年齢は20代。プロアマ問わず。つかアマチュアの方が質が悪い。目当ては金…というより、彼女らが当然のように享受している、都会でのハイレベルな消費生活。女に対しては、とにもかくにも優しい。誠実で浮気はしない。DVなんて論外。「こどもなんて要らない。俺にとって世界で一番カワイイのは***ちゃんだから」と女を安心させ、甘やかす。癒やしを与える。ホストの本音は「自分自身がこどもだから、ライバルは不要」ということなのだが、女はまず絶対に気づかない。そうやって10年がたちまち過ぎ去る。

 かつて20代だった「若いホスト」は30代。そろそろ身を固めよう、と考えている。その相手は残念ながら10年付き合った「50代美女」ではない。学歴ともキャリアとも無縁で、美貌すら持ち合わせていない、でも「圧倒的に若い女」だ。「俺、やっぱり自分のこどもが欲しいんだ」が、別れを切り出す決まり文句。

 呆然と立ちすくむしかない「50代美女」。キャリアはある。ホストに多少食いつぶされたと言っても、資産も十分残ってる。でも、この先の「晩年」を誰とどうやって生きていけばいいのか?

注1…「農業高校の番長の女」は、映画「SO WHAT」で安原麗子が演じたキャラクター。実在の農業高校(もしくはそこの番長)を中傷するものではありません。 

SO WHAT [DVD]

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 注2…「野良女」は宮木あや子の小説。 

野良女 (光文社文庫)

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