三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

売れる売れないは作家次第

「自分の本が売れないのは、出版社の責任」という作家がいるとしたら、十中八九勘違い。以下の例を除いては。

 今まで複数の出版社から何作も出版していて、そのどれもが10万部売れているとする。ところが、A社から出した作品のみが、5千部も売れていない。この場合は「A社の責任」だろう。
 どれも3千部程度でA社が千部だったら、それは誤差。A社のみ1万部以上売れたなら、それは作家の力。

 宣伝費は関係ない。そもそも新刊時の宣伝なんて、大手出版社であっても新聞の連合広告や、無料で入れられる自社雑誌の広告ぐらい。宣伝費をかけるのは、現に売れ始めてから。
 新刊書籍が月に30点あったとして、それぞれに平等に予算を振り分けても宣伝効果は薄い。出してみて、売れた1点2点にのみ、予算を集中したほうが効率がいい。売れれば売れるほど、より多くの宣伝費が使える。電車の車内ステッカー、テレビのスポット、近年ならネット関係も。

 そうやって、3万を10万、10万を30万、50万と売上を伸ばしていくにあたっては、出版社には力がある。でも、最初のヒットについては、これは作家の力以外の何物もない。

「ウチはどんなものでも売ってみせる」という出版社がいたら、単なる嘘つき。新刊のすべてがヒットしてるか見れば一目瞭然。売れないものは売れない。それは作家の責任。

 その上であえて書くが、読者からすれば、実売数千部の作家も、ミリオンの作家も、作家としては対等。どちらが上とか下は無い。そして出版社の「顧客」は何よりもまず読者だから、数千部作家の読者にも、ミリオン作家の読者にも、等しく丁寧に対応する。どちらかと言えば前者に対して、より丁寧に対応する。これはキレイゴトではなく、戦略的に有効だから。評論家やマスコミ関係、いわゆるインフルエンサー、ジャンルによっては専門家、そういう人々が含まれている可能性が高い。クレームにもしっかり対応する。そこらへんが出版社の役割なんだろう、と思う。商品の「足元」をキッチリと固める作業。