三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

津原泰水と見城徹

 見城徹のツイートを読む限り、津原をディスっていたとは思えない。

津原泰水さんの幻冬舎での1冊目。僕は出版を躊躇いましたが担当者の熱い想いに負けてOKを出しました。初版5000部、実売1000部も行きませんでした。

  書籍の場合、採算点は80%とか85%だから、初版5000部なら実売4000部は必要。それが1000部以下なら相当の赤字だ。

2冊目が今回の本で僕や営業局の反対を押し切ってまたもや担当者が頑張りました。実売1800でしたが、担当者の心意気に賭けて文庫化も決断しました。 

  2冊目の実売は1冊目の倍くらいか。それでも赤字には変わりない。文庫は単価が低い分、よりシビアな勝負になる。赤字覚悟の「決断」だろう。そんだけの赤字を出しつつも、津原泰水と付き合ってきたのだ、と見城は言っている。ディス? 逆でしょう。そんだけ津原をリスペクトしてきた、ということじゃないか。

 だがしかし、この見城発言に対して「多くの作家」が反発してるそうだ。曰く「個人情報の無断公開だ」、曰く「実売数を公表することで、その著者が他社で仕事がしにくくなる」、曰く「本を売るのは出版社の仕事なので出した本が売れない責任は主に出版社にある」。

 あのね。初版部数や実売数は「個人情報」じゃありません。出版という社会活動にして経済行為に関する数字であり、本質的にパブリックなものです。

 ある出版社がある著者の本を出そうとする場合、その著者が過去に出した本の実績を調べます。初版数、重版の有無、実売数、すべて分かります。その上で出版の可否を判断するんです。それも「出版社の仕事」です。その判断が間違っていて、せっかく出した本が売れなくても、著者に払った原稿料や発行印税を「返せ」とは言えません。赤字は出版社がかぶります。

 だからだ、著者によっては、初版部数や実売数を公にしたくない。隠したい。過去の「実績」は秘密にして、「絶対売れるよ」と吹いて、調査能力に欠けた出版社をだまし、過大な初版部数を刷らせる。全国の書店に配本するが、まったく売れずに大半が返品される。出版社は大赤字。取次も書店も多大な迷惑をこうむるが、著者は痛くもかゆくもない。新たな「実績」も「個人情報」と言い張って絶対秘密にして、次の出版社に企画を持ち込む。

 見城発言に反発する「多くの作家」の中にも、もしかしたら、こんな手合いが混じってるのかもしれんよ。