良い小説だった。いわゆる「女の友情」ではない、女同士の熱い友情の物語。ハッピーエンドだったから10倍良い。アンハッピーにしたほうが「人間の真実」をより深くえぐれて純文学的に正しいのだろうが、そんなんは糞食らえ。
現在を小夜子の視点で書き、過去を葵の視点で書くという手法が「技」を感じさせる。その過去の葵とナナコについては「自虐の詩」を連想した。
ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね。
ハードボイルドな言葉だ。そこからはぐれたら生きていけなくなるほど「群れ」に同化するよりは、群れから離れても生きていける何かを得るほうが大切。昔だったら信仰だろう。神が死に、イデオロギーも死んだ現在は、自分自身の信念、掟。自由とはそういう意味だ。自分自身のルールのみに従って、自分自身思うがままに生きていけるほどに、自分自身を厳しく律しているという自信。そんな自由人同士の交わりのみが「友情」と呼ぶに値する。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/11/09
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