三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

松本仁一「カラシニコフ」

旧ソ連の技術者ミハイル・カラシニコフ(身長162センチの元戦車兵。未だ存命)が開発した自動小銃AK47をモチーフとしたルポルタージュ
いろんなことを考えさせられた。AK47=通称カラシニコフの、シンプルイズベストの設計思想。ろくに手入れしなくとも泥まみれでも、故障知らずでバリバリ撃ちまくれる自動小銃の傑作。「実用的工業製品」としては究極の完成形とも言えるが、その「実用性」がブラックアフリカの「こども兵」の悲劇をもたらした。小学校に通ってるくらいの幼い少年少女が、ゲリラに拉致されて「兵士」に仕立て上げられた。メンテ不要のカラシニコフが11歳の少女にも「人を殺せる力」を与えた。ゆえに「悪魔の銃」とも呼ばれる。
そんな悲劇がてんこ盛りのブラックアフリカ。不用意に介入すれば「ブラックホークダウン」だ。
赤道ギニアのような「失敗国家(failes states)」だったら、数十人の傭兵部隊が体制を転覆させることも可能だ」というフォーサイスの発言には実に説得力がある。そんな腐れ国家でも「独立国」として認め、尊重しようという「国際社会」の偽善が無ければ、だが。
ポスト・アパルトヘイトの南ア黒人政権がたちまち腐敗し、限りなく「失敗国家」に近づいていて、白人農場への襲撃を多発させていること。第二次大戦後、ブラックアフリカに雨後の筍のように出現した「社会主義国」の多くが、実態として「失敗国家」に他ならないことを、やや遠まわしながらキチンと指摘している。「朝日記者」にしちゃ良心的(笑)
その「失敗国家」の建て直しには何が必要なのか? 一番簡単なのは、独立国としての資格を剥奪し、「それ以前」からやり直させることだろう。それが藩王国なのか、部族社会なのか、植民地なのかは知らんが。
著者はそうは思っていないようだが、ひとたびカラシニコフ武装した民衆が、何らかの強制無しに、自発的に武装解除する可能性はゼロに等しいと思う。アメリカの例を見れば分かる。あれだけの「先進国」で「法と秩序」を実現しているにも関わらず、銃規制は遅々として進まない。でもまあ、その「アメリカ並み」にすることはできるかもしれない。カラシニコフの所持を認めるが、警察に登録しておかなければいけない。未成年者の所持は認めない。特別の許可が無い限り、持ち歩いてはいけない。そんだけでも、ずいぶんマシになるだろう。

カラシニコフ

カラシニコフ