三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

ダイジェストじゃダメなのだ

 本とその要約は別物。ある著者がある本で読者に伝えようとしていることと、その本の著述形式とは有機的に繋がっている。だから要約を読んでも、著者の伝えたいことは分からない。

 小説ならば特にそう。「世界の名著のあらすじ」を100冊分読んだとしても、何の意味もない。ネタバレ100連発食らったことにより、本編の読書体験の素晴らしさが90%減衰されちまうという、逆効果こそあり得るだろうが。いや、それも違う。ネタバレされて無価値になるのは、低レベルのミステリとか、そんなもんだけ。モノホンの名著は毀損されやしない。落ちが分かっていても、そんな知識など吹っ飛ぶほど圧倒的に感動させられる。

 自分自身の読書体験としては「白鯨」がそうだった。ネタバレどころか、映画やらまんがやらで散々見せられてきたはずなのに、本編を読んだらめちゃくちゃ面白かった。巨鯨の如き、とてつもなく巨大な小説を堪能させていただいた。

 ああそうか。「ネタバレ厳禁」なんてほざいてる小説など、その1点でダメ認定して、読まずに済ませるのが正解なのだ。ラノベの大半がそうだろう。ミステリも。それ以外の、モノホンの小説をこそ、読まねばなるまい。残り時間の少ない晩年においてなら、なおさら。