三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「秘密」(広末涼子の)

黒田硫黄の「映画に毛が3本!」を読んで興味がわき、レンタルビデオで観た。黒田の言う通り「奇怪」としか言えない作品。
(以下完全ネタバレっす)



高校生の娘・藻奈美(広末涼子)の肉体と40歳の妻・直子(岸本加代子)の精神を持った存在に呪縛される父/夫(小林薫)。最初は「若々しい娘の姿の世話女房」という、心浮き立つファンタジーであった。「デート」は楽しいし、家事万端完璧だし、一緒に風呂入って背中流してもくれるし。
でもやがて袋小路に落ち込む。妻がいる以上、他の女と付き合うわけにはいかない。娘の肉体であるから、寝るわけにもいかない。妻の電話を盗聴して、大学ヨット部の先輩(伊藤英明)に対し、嫉妬を爆発させるが、妻との関係も最悪になる。「俺には未来なんか無い。お前にも幸せになる権利なんて無い!」という夫の叫びが悲痛。とことん煮詰まったところで「あれ、しようか」と妻に誘われ、どうせ出口の無い人生、畜生道に堕ちる覚悟を決め、ベッドインまでいくが、やっぱり娘の肉体を抱くことはできない。
娘の精神が甦ったところで、光明が見える。抱かなくて良かった!というのが実感だろう。娘/妻の交代を繰り返しながら、次第に娘が優勢になっていく。そして初めてデートした岬での妻との別離。ここで終われば、ちょっとヤバいところに行きかけたものの、全体としては感動話だった。
ラスト、数年後のラーメン屋との結婚式シーンで「実は妻だった」との驚愕の事実が明かされる。ちゃんと説明はされていないのだが、察するに「娘の精神甦り」以下は、すべて妻の芝居だったのだ。妻を死なせ、娘として生きることにより、自分は第二の人生を生きることが可能になり、夫も呪縛から解放される。これこそが最善の道であると理屈では分かるが、気持ちはどうにも納得がいかない。女って恐ろしい、とおもたよ。

秘密 [DVD]

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映画に毛が3本! (KCピース)

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