三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

本を捨てる

 昨今流行の?「断捨離」というのはよく分からんが、不要物を捨てずにいると、狭い家がいっそう狭くなるので、あまり溜め込まないように気をつけている。
 ただ、これは青少年時代からなのだが、本を捨てるのには多大な心理的抵抗があった。読み終えて、再読することはなかろう本を本棚に溜め込んで、気がつくとエライ量になっていた。それが最大量だったのが、30代の前半…かれこれ四半世紀昔の、まさに光陰矢の如しなのであるが…そうだ、都下から板橋区に転居してきた頃だ。
 高さ180cm幅80cmのスチールの本棚10台にギチギチに詰まる量の本を所有していた。2LDKのうちの8畳間をまるまる書庫にしていた。冊数にして、5千冊ほどだっただろうか。それなりに「捨てた」結果だったのだ。引っ越しを期に、雑誌類は半分以上廃棄したし、年鑑的なものは最新年度のみ残して後は捨てた。
 結婚を期に減らした。…「捨てた」じゃないところがポイント。本専門の貸し倉庫的なことをやっている業者があり、そこにダンボール単位で預けたのだ。保管料は1箱1か月200円だから一見安そうなのだが、年に2400円。20数箱なら5万円にもなる。それで全体の半分どころか四分の一にも満たない。で、本棚の空きスペースにはたちまち新たな本が加わり、元の木阿弥状態に。
 それでも「捨てる」ことができるようになった。最初のきっかけは、インターネットと新古書店の登場だ。両者により「さほど古くない古書」の流通が画期的に活性化した。従来の古書店では相手にされなかった「新古書」が「売れる」ようになった。で、値がつかないものを「捨てる」契機にもなった。古書流通の「見える化」により、再入手が容易い本を手元に置いておく必然性が薄くなったということもある。また、ネットを通じての情報検索が一般的になったため、年鑑的な資料を手元に置く必要が無くなった。
 第2のきっかけが電子書籍だった。いや、正確に言えば「電子書籍登場前夜」の自炊ブームだ。裁断機とスキャナで紙書籍を電子化する。これにハマった。新刊の紙書籍を自炊して電子書籍リーダーで読むのに加えて、手持ち書籍も「炊いて」しまえば、コンテンツは保持したまま、本棚のスペースが減る。千冊までは行ってないと思うが、相当な冊数を処理した。電子書籍が一般化して以降は、基本的に紙書籍を買わなくなったので、本棚の本が増えなくなった。
 で、第3のきっかけが昨年の自宅のリフォーム。この際に自分の本棚を全廃した。倉庫に預けた本は、20年預けっぱなしだったのだから、不要と判断し、特に思い入れのあるもの以外は廃棄した。その上で、どうしても捨てられない本はダンボールにまとめてクローゼットに収納した。
 それですべて片付いてしまった。それでも、日用の辞書やらスペイン語その他の実用系やらで数十冊は残ったが、もはや「本棚」は不要だ。紙書籍を読むこともあるが、読了後に即廃棄する。
 おかげでずいぶんと人生が「軽く」なった。頭の中身も? そうかもしれない。