三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

機本伸司「僕たちの終末」

面白かった。太陽活動の異状で破滅的危機が近づく地球から脱出するため、人類初の有人恒星間宇宙船を建造する、というお話。昔の「ハードSF」であったような設定だが、今から45年後の2050年の日本の話であるところがミソ。プラズマ封じ込め型の核融合が実現してる程度で、SF的な技術的進歩は無い。超光速もワープも「どこでもドア」も無し。月面にはアメリカが基地を建設しているが、火星への有人飛行もまだ。
「そんなんで太陽系外まで行けるのかよ?」というSF野郎の疑問を先取りできる限り先取って「ダメモトでやってみようじゃん」に洗脳する無理やり感が魅力。言わば、大人のジュヴナイル。
主人公がインターネットで構想をぶち上げ、出資金を募集するところから始まるのだが、小さな人材派遣会社を中心にスタートした組織がどんどん大きくなり、設計のコンペやらメーカーへの発注やら、それなりに「らしく」描写しているところが楽しい。最後の最後まで予断を許さないスリリングな展開もグート。
プロットからストーリー展開から「穴」を探せばいくらでもある。「そんな船が本当に必要なのか?」という根本的な疑問すら無いとは言えないのだが、「人類初の有人恒星間宇宙船を日本人が民間主導で実現する」という胸躍るアイディアが最初にあって、それを可能にする状況を逆算して構成された作品だと思うので、言うだけ野暮。

僕たちの終末

僕たちの終末