三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「イノセンス」

レンタルDVDで観た。傑作じゃん。
バトー主人公のポリスディテクティブストーリーに徹して、草薙素子関連描こうという誘惑をストイックに退けたのが勝因。バトーかっこいいよバトー(笑)
「人間vs人形」の論議を呼んだという、ラスト近くのバトーの台詞だが、実に明快。ゴーストを有するが故に人間を特権的存在とするなら、赤ん坊にも動物にも、未熟ながらゴーストはあるだろう、もしかして人形にも、ということ。「公務員」的にはなかなか認められない見解だろうけど。
生身をもキカイの身体をも超えて、電子ネットワークの普遍的存在=「神」となってしまった草薙素子にとっては、人間特権論の破綻は自明の理。生身の右手を失ってキカイの手に換えられ、より素子に近づきつつあるバトーにとっても「人間=人形」は実感に近い、ということなのだろう。
その人形が、性器を備えたセクサロイドであるというのも重要なポイント。本来、人間同士の行為であるセックスの相方を務めうる人形が、人間に準ずるものであるというのは、多少なりともおたくな感性の持ち主ならば、十分に実感可能でしょ?
また、「神/人間/人形」と断絶を設定せざるを得ないのは、ユダヤキリスト教の聖書的偏見。日本人にとっては人間が神になるのはしばしば起こり得る事態であり、人形が人間同様なのも「鉄腕アトム」以来の常識(笑) 聖書的偏見による人間特権論を声高に主張しておいて、日本人的感性に訴えて揺るがしてみせる。押井守が仕掛けているのは要するにそれだけのこと。マッチポンプ?(笑) 「エヴァ」のインチキグノーシス主義みたいなもんよ。
攻殻」の時も感じたが、音声にリアル感出そうとしているためか、台詞がところどころ聞こえづらい。声優さん皆渋い低音系だし、漢籍の格言など、文字ヅラ見ないと理解しがたいものを多用してるし。観客に無用のストレスをかける。こういうところは逆に「アニメ」的に分かりやすくしたほうが良いと思う。キンキンのアニメ声はカンベンだが、まあ、中庸を目指して。

イノセンス スタンダード版 [DVD]

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