三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「王立宇宙軍 オネアミスの翼」

先日、ちょと理由があってビデオ借りてきて観たのだが、こんな傑作だとは思わなかった。今まで見損なっていた。スマン!
劇場公開が1987年。今から17年前か。当時いっぺん観ているのですよ。その時は正直言って分からなかった。異世界趣味がおたく臭かった。「ライトスタッフ」がスッゲー好きだったので、そのパクリが目につくたびに腹が立った。何より、主人公とヒロイン?のエピソードが全部嫌だった。
嫌…今なら違う言葉で表現できる。「イタい」のだ。素人童貞丸出しの軍人と宗教(というよかカルト)に首までどっぷり漬かった女の「恋愛」ですぜ。全編を通じて唯一の「ラブシーン」はレイプ(未遂)。「もうかんべんしてくれよ」と。観続けるのが苦痛だった。
その「イタさ」こそを表現したかったのだ、と今は分かる。レイプ(未遂)事件の翌朝、謝罪する軍人に対して、カルト女は言う。「殴ってしまってごめんなさい(彼女が彼を殴り倒さなければレイプされていたのだが)…あなたが許してくれるのは分かってる。でも、私にとっては許されないことなんです」。女性に対してとことん不器用な軍人にとっては、ある意味せいいっぱいの「愛情表現」だったが、それはカルト女をよりいっそう深くカルトに没入させる結果となる。
いろいろあって、人類初の宇宙飛行士となった軍人は、自分なりに理解したカルトの教えを地上に向かって語りかける。彼の偉業を当のカルト女は知らず、今日もまた街角で、誰も受け取ってくれないカルトのチラシを配り続ける。
結論:「恋愛」は時には絶対的に不毛である。その不毛の中においても、時には何らかの偉業が成し遂げられる。
この「恋愛の絶対的不毛性」が当時(20代)の自分には理解できなかったのだと思う。大人になった(笑)今なら良く分かる。
オネアミスの翼」の傑作たるゆえんは、それだけじゃない、ということももちろん分かっている。異世界趣味も坂本龍一の音楽も、今なら分かるし、正しく評価できるつもりだ。