三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

映画「阿修羅のごとく」

レンタルDVDで観る。予想に反して「コメディー」だったのには驚かされた。
1979年放送のテレビドラマもリアルタイムで観ていた。「成長した娘が目撃した、年老いた父親の不倫」を筆頭に、従来のホームドラマがタブーとしていた領域を積極的に侵犯し、「ここまでやるか?」感を売りとしたドラマだったように記憶する。今でも耳に残るほど印象的かつ異様な音楽(トルコ行進曲の原曲と解説された)とあいまって「忘れられないドラマ」の一つである。
なのに映画はコメディー。かつてシリアスだったシチュエーションが、今はギャグに他ならないということ? 「最初は悲劇、2回目は喜劇」ということか? よく分からん。「前」観たころは二十歳前の「こども」だったし。コンプリートしたわけでもないし。
とまれ、後半のシリアスな展開にも、どこか笑いがあり、陰惨さを免れているのは、監督の森田芳光の勝利と言えよう。
で、コメディーであるからこそ役者の資質が問われる。母親役の八千草薫を筆頭に、長女:大竹しのぶ、次女:黒木瞳、三女:深津絵里、四女:深田恭子と、女優全員が芸達者。黒木瞳にコメディエンヌを割り振り、黒木がしっかり応えているのは、さすが宝塚出身。準「姉妹」の桃井かおりは、文句のつけようのない、堂々の桃井かおり(笑)
父親役の仲代達矢をはじめ、小林薫、中村獅堂と男優陣(?)も相当のラインナップなのだが、あえて「脇」に徹しさせて「女たちの戦い」を際立たせる。
1979年というより「昭和54年」と記したほうがピンとくる微妙な過去を、かなり正確に再現した小技も買う。ナレーションは加藤治子だったと、クレジット見て初めて分かった。

阿修羅のごとく [DVD]

阿修羅のごとく [DVD]