三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「ジョゼと虎と魚たち」

レンタルで観た。佳作。
今さら自分が書くまでもないことなのだが。従来の障害者モノの定番的パターンは、障害者は天使のような無垢な人格で、世間やら周囲の人間やらの偏見により、不幸になっている。それを救う主人公は「白馬の騎士」。あらゆる障害を排除して、障害者との愛をマットウする。
現実にはおそらく、良くも悪くも「普通」なのだろう。健常者だから、障害者だからどうこうではなく、男と女の関係として、うまく行ったりもすれば複雑にこじれたりもする。
この映画は、その中間を見事に衝いている。池脇千鶴演じるヒロイン・ジョゼは、福祉制度を積極的に拒否している祖母に囲い込まれ、世間から隔絶されて生きてきた、イマドキまれな障害者。妻夫木聡演じる「騎士」役・恒夫は、デフォでもモテモテの青年なのだが、最初は同情から始まったジョゼとの関係にハマりこんでしまう。
ジョゼの「世界」は、祖母が押す乳母車に乗せられての夜明け前の「散歩」以外、ボロっちい公営住宅の押入れの中に篭って、祖母がゴミ置き場から拾ってきた本を読みふけるだけだったが、恒夫との出会いにより、飛躍的に広がる。ジョゼの喜びが恒夫の喜びにもなる。
だが、ジョゼの立場からすれば、行動の自由を保障する電動車椅子がゲットできれば解決できることが大半。逆に、妙な使命感に縛られた「騎士」の存在を鬱陶しく感じることも増えるかもしれない。恒夫はろくに本も読んでないし、話も合わないし。そんな二人の関係が、結局のところどうなるのか? その「結末」は実にリアルに感じられた。
最近の日本映画にはおもしろい作品が多い。まだまだ見逃している傑作がたくさんありそうだ。

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

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