三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「小豆沢」考

 小豆沢って地名はさ。もともと「アズ」の「サワ」という意味で、「アズ」すなわち「崖」が崩れて「サワ」すなわち「水が流れる低地」に至ってる場所、てな意味だった。これは当時の住民にとっては重要なこと。だって、崖から低地へ直接下に降りるのは大変だけど、それが崩れていれば、自然と坂道となってて、上り下りが容易い。人の往来が増えれば、それが道となる。それが「アズサワ」の本来の姿。

 でもそこに「小豆沢」という漢字を当てたところから、言霊を呼び込むことになった。

 おそらく、年貢を取り立てるための検地の書類を作る際に、地名を文字として記す必要があったんじゃないか。地元で昔から言い習わしてきた「アズサワ」に「小豆沢」なる文字が当てられた。

 その「小豆」が注目された。重要な穀物の一つだから。そこから「小豆」をモチーフとした物語が生まれる。「小豆」を何かしらした土地であるから、「小豆沢」なる地名となった、という物語。つか、江戸時代あたりの文人が想像9割、いや100パーで、でっちあげる。「平将門に献上すべき小豆を荒川の水運を使って運んでいた船が、ここで難破したが故に小豆沢なる地名となった」てな地名起源説話が生成される。

 その時点で「平将門」の言霊が、板橋に持ち込まれちまったんだよ。怨霊であり、凄まじいパワーを持ったお方だ。それが、「オモテ」である神田明神と、「ウラ」である大手町の首塚に鎮められてりゃいいものを、とんと田舎の板橋に「パワースポット」と形成するハメになっちまった。まあ、ありがたいことでもあるのだがね。