三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

ビニール凧

ビニール凧

こどもが保育園から持ち帰った手作りの凧を見てびっくりした。自分が小学生時代に作ったものとまったく同じなのだ。
雑な作画で恐縮なのだが、ポリエチレン製のゴミ袋かなんかを1枚に開いて、右上図のような形に切り出す。真ん中の正方形部分が一辺30センチくらい。その左右に10センチくらいの幅の三角形をつけた六角形だ。正方形部分の縦線2本に、同じ長さの竹ひごを貼り付ける。三角形部分の頂点同士を40センチほどの長さのタコ糸で結ぶ。タコ糸の真ん中に道糸になるタコ糸を結びつける。以上。製作時間10分もかからない。
自分の小学生時代の元ネタは、新聞記事だった。どこぞの大学の先生が考案した、てな記事だったように記憶するが、さだかではない。試作して揚げてみたら実によく揚がるので、あっという間にこども達の間で流行した。ゲイラカイトが登場するずっと以前で、フニャフニャしたビニール製の凧というのが逆に新鮮だった。
それまで自分たちが揚げていた凧は四角い紙製の和凧で尻尾が必要だった。凧本体の反らせ具合や尻尾の材質や長さで揚がり方が格段に違った。揚げるための技術も必要だった。こどもなりに、腕の良し悪しが歴然としていたのだ。
このビニール凧は、左右対称に作るだけで、どんな下手な子でも簡単に揚げられた。こと「遊び」に関しては、こどもは大人以上に合理的かつ功利的だから、たちまち和凧は駆逐され、ビニール凧全盛となった。同時に、こども界における「凧揚げ技術のヒエラルキー」は崩壊した。そして、ビニール凧は「手作り凧」というジャンルの定番となり、現在に至る…ということか。途中何があったかは分からんが。
ただし、このビニール凧にも弱点があった。凧を揚げているというよりは、ゴミ袋の切れっ端を揚げているようにしか見えない……という、美学的には致命的な(w 「伝統的なこどもの遊び」文化の一部を確実に破壊したのは言うまでもない。
「和凧文化の崩壊」の原因は、「誰でも簡単に揚げられるゲイラカイト」の輸入に始まった、という言説があるように思うが、少なくとも自分の周囲では、ビニール凧が流行した時点で和凧は滅びていた。自分達にとってのゲイラカイトは、「より大きくカッコイイビニール凧」だったのだ。