三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「ハウルの動く城」

レンタルDVDで観る。世評通りの作品。すなわち、アニメとしては一流だが、映画としては失敗作。最大の原因は、プロットやシナリオを十二分に煮詰めないまま、作品を作り始めているから。映画を観ていない人間に、ストーリーのみを語り聞かせたら、「?」の連発だろう。
巨匠におかれましては百も承知の確信犯なんだと思う。あのグロテスクな「城」をアニメで動かすちうのが最大目的だったんしょ。美少年美少女は対「世間」、フリークスは対「通」へのそれぞれサービス。俺様は楽しい、おまいらも楽しませてやった、それ以上何を求める? ちうところだろう。
クリエイターは実にいい仕事をしている。一つだけ例を挙げれば、ヒロインの造形を18歳から90歳まで、年齢別におそらく10パターン以上作っている。どれもとても出来がいい。ハイティーンから老婆までのヒロインの変化そのものをテーマとしても、十分おもしろい作品が出来たと思う。
そのためには、ヒロインの変化に関するルールを観客にオープンにして、変化への期待を持たせなければならない。一番分かりやすいのは、変身ヒーローや魔法少女パターン。そこまで分かりやすくする必要はないが、あえて分かりにくくするのは作品に対する「害」だろう。この映画においては、せいぜい「気分の盛り上がり」。その場その場のムードに合わせて年齢を行き来しているようにしか見えないので、観客は戸惑うばかり。その上、客の大半は「婆⇔少女」しか気づかないだろうし、気づいても意味するところが分からない。
せっかくのクリエイターの仕事が無駄になっている。もったいない。

ハウルの動く城 [DVD]

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