三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

荻原浩「明日の記憶」

広告制作会社の50歳の部長さんが若年性アルツハイマーになる話。会社では周囲から信頼される上司、家庭では娘の結婚を数か月後に控えた良きパパ。その彼が、病気の進行につれて、着実に容赦なく痴呆化していくさまが、かなりリアルに描かれる。身につまされて怖い。
で、この小説によれば、アルツハイマーは不治の病で、単に記憶を無くしていくばかりでなく、人格も崩壊し、感情も感覚もズタボロになって、最後は死ぬのな。知らんかった。ホント怖いねえ。
昔読んだ「アルジャーノンに花束を」を思い出した。主人公のチャーリー(アルジャーノンは彼が飼っているネズミの名前)は、もともと白痴だったのが、脳手術によって超天才に変貌し、やがてまた白痴に戻っていく。悲しい話であるが、死にはしない。部長さんのほうが悲劇の度が深い。
感動のラストシーンも含め、描写が全体に映像的で、それもテレビドラマ臭い。テレビドラマレベルの分かりやすさに徹している、ということでもあり、テレビドラマレベルのシナリオと製作予算で映像化できるレベルの描写に徹している、ということでもある。それに気づくとちょと興ざめ。
もっとも「興ざめ」なのは、自分がテレビ嫌いで、とりわけテレビドラマが大嫌いだからだ。そうした偏見がないひとには、単に分かりやすく感動的な小説ちうことで、一読お薦め。

明日の記憶

明日の記憶