三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「ゼブラーマン」

クドカンつながりでレンタルDVDで観る。予想外の傑作。
正直、中盤まで退屈だったが、ラスト十数分で面白さ急上昇。中盤までの退屈は、計算されたものだったのだな。そう感じたのは、自分が多少なりともおたくだからかもしれない。一般人にとって、非常に入り込みやすい仕掛けがほどこされている。すなわち「日常が主、特撮やらSFは道具」と徹底したこと。
主人公は落ちこぼれ小学教師で、仕事も家庭もダメダメ。自分が小学生時代にトラウマった不人気特撮番組「ゼブラーマン」の私的コスプレにのめりこんでいる。そのダメ男が、怪人と戦うことにより、ヒーローに成長していく。一般人からすれば、そのカタルシスを担保するのがSF的設定であり、だったらSFでもOK、と感じる。
そのSF設定は、実はSFおたくから見ればとんでもなくいい加減なのだが、それでも無問題。侵略者は緑色で頭でっかちの「火星人」、なぜ侵略するかの理由づけは「侵略者だから」と、可能な限りにシンプル。主人公が「信じれば強くなる。空も飛べる」というのはSFからすれば究極のタブーだが、そのタブー侵犯が観客のカタルシスに繋がるよう、ストーリーを構成すれば、タブーこそが魅力となる。
それと平行して、おたくをも納得させるのは、主人公のコスチュームの進化を丁寧に追っているところ。雑な手作り→丁寧な手作り→日本の特撮モノ並み→ハリウッドの特撮モノ並み、と。
主演の哀川翔だが、知ってるひとと知らないひとの落差がかなり激しい俳優ではないだろうか。「ゼブラーマン」が主演100本目ということだが、他の99本の大半が東映ヤクザ映画(Vシネ含む)で、知ってるひとは「あの哀川翔がこんな役を!」だが、その手の映画に興味が無いひとは「誰だっけ?」。映画は当然、前者の観客を想定している。自分の世代で言えば、若い頃の菅原文太か。もちっと前なら高倉健鶴田浩二健さんが、初めて「かたぎ」(前科者ですが)を演じた「幸せの黄色いハンカチ」に匹敵する衝撃だったのかもしれない。そう考えると「あの哀川翔が」も理解できなくは無い。

ゼブラーマン [DVD]

ゼブラーマン [DVD]