三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「真夜中の弥次さん喜多さん」

客を選ぶ作品だが、しりあがり寿ファンなら必見の佳作。
ホモで薬物中毒の喜多さんを演じた中村七之助の上手さが際立っていた。弥次さんの長瀬智也もけして悪くは無かっただけに、比較されて損するだろう長瀬がちと気の毒だった。
しりあがり寿まんがの実写化など絶対不可能だと思っていたので、出来の良さに驚かされた。しりあがりまんがの要素は、パロディー、ナンセンス、シュールなのだが、もうひとつ「いい加減さ」がある。パロディーにいい加減さが加味された結果、ナンセンスやシュールが生成される、という感じか。パロディーなりに作品世界を維持しようとする努力も希薄だから、世界は簡単に崩壊し、アイディアが浮かぶ限り、自在に変幻する。時には「自動書記」的なペンの走りによって、作者本人が意識すらしない方向へ、限りなく変形変質していく。その究極が「弥次喜多in Deep」だったと思う。
映画はそうはいかない。キッチリした世界観を監督以下スタッフ、主演以下キャストが全員共有して、初めてカメラが回る。偶然性に期待する演出も無いことはないが、あらかじめ想定したラストシーンへと収斂させることはできない。この作品の場合は、世界の崩し方を監督がキッチリ決めているのは当然として、勢いに任せていい加減に展開しているかのごとき「感じ」まで、キッチリ計算して演出されている。そこがスゴい。