三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

古井由吉「野川」

久々の古井読書。感想というより印象メモとして記す。
友人「内山」が22歳の学生時代に、下宿先の女主人35歳と寝てしまう、という下りは「めぞん一刻」のリアル版のようでおぞましい。
ちうか、男女の交わりは本質的に実存的に生々しくおぞましいものであり、それを秩序づけ、社会化するために「恋愛」やら「結婚」やらの虚構が必要なのだ。「結婚」が究極の制度化とすれば、その数段以前の「恋愛」は「板子一枚下は地獄」てな危うさに満ちている。男女の片方が恋愛と思っても、もう片方はレイプだと思ってるかもしれない。商売と割り切っているかもしれない。オナニーの道具に過ぎないかもしれない。情熱が興ざめした瞬間、おぞましさが立ち上がる。
小説をネタにまんがの話ばかりで恐縮だが、昔「みゆき」のラストに感じたのもそれだった。血の繋がりが無かったとしても、こどもの頃から「妹」として認識してきた存在と「恋愛」し「結婚」するおぞましさ。人生が袋小路に入り、閉鎖空間で窒息するような息苦しさ。
こんなことばかり考えていたから、「おたく世代」で、それなりのまんが好きだったにもかかわらず、ラブコメには乗り切れなかったのだろう。

野川

野川