三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「ジハードとテロリズム」

オサマ・ビン・ラディン(著者の表記ではウサーマ・ビン・ラーデン)はすでに死んでいる、と著者は推察する。その根拠はアラブ世界の文化に対する著者の洞察に基づくものであり、決定的なものではないにもかかわらず、かなりの説得力が感じられる。
インターネットと衛星放送によって、世界各国に在住するムスリムによる地球規模の「バーチャルなイスラム世界国家」が完成した、という指摘は鋭い。
著者の経歴がユニークだ。1947年岩手県生まれ。拓殖大学商学部貿易学科卒業後、国立リビア大学神学部に留学。イスラム神学専攻。埼玉大学経済学修士、トルコ・トルクメニスタン・インターナショナル・ユニバーシティ名誉博士。アラブ・データ・センターのベイルート駐在員、クウエート・アルカバス紙東京特派員、在日リビア大使館員、拓殖大学海外事情研究所教授を経て、現在、東京財団シニア・リサーチ・フェロー。
経歴だけで本が10冊は書けそうだ。ちなみに東京財団というのは、競艇日本財団の関係団体。曽野綾子のブレーンの一人かもしれない。
帝国主義vsイスラムの戦いから世界を救うため、日本ならではの貢献策がある、と著者は説く。すなわち、途上国に対しては、植民地主義的な資源の収奪や搾取ではなく、教育をはじめとしたインフラ整備と技術移転による開発を積極的に行い、共存共栄をはかっていく。イラクに派遣された自衛隊もあくまで復興支援に徹し、現地の人々のために尽くすべきだ、と。
明記はされてないが「私も礼拝を行うが」と書いてあるところから、著者自身ムスリムであると分かる。今まで読んだイスラム関係の本の中で、文句なしにいちばん面白い。一読お薦め。