三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

呪われた町ファルージャ

「囚われのファルージャ」なる出所不明の文章がプロ市民連中の間でチェーンメール化しているらしい。アメリカ・イラク連合軍の包囲攻撃を受けているファルージャを、アメリカにより原爆を投下されたヒロシマや、旧ソ連軍により蹂躙されたアフガンの首都カブールになぞらえ、「沈黙を守るなら次はお前の町だ」と煽る。シェークスピアを引用して、反米プロパガンダを文芸的に飾り立てている。
そのファルージャは、イラク暫定政府の統治から離れ、武装勢力支配下にあった。イラク各地で拉致された人々はファルージャに集められ、首を斬られて殺された。その様子はビデオに撮影され、インターネットに流された。「手足を切断された欧米人女性とみられる遺体」が発見された。日本人の犠牲者・香田青年のパスポートが見つかったという未確認情報もある。町には巨大な地下施設があり、武装勢力の物資が備蓄されていた。自爆テロに使われる自動車爆弾の製造工場が発見されたとの報道もある。ファルージャは、文字通り「テロリストの巣窟」だったわけだ。
幸いにして、住民の犠牲者数はさほどではないようだが、この「住民」という呼称にも疑問符がつく。「残虐行為の現場となった町にたまたま住んでいた無辜の民間人」なのだろうか? 例えの悪さを承知で言えば、「女子高生監禁殺人が行われた綾瀬の住民」のように。3月の末に4人のアメリカ人がファルージャで虐殺された。テレビカメラの前で、無残な焼死体を引きずり回し、盛んに気勢を上げていた連中こそ、まぎれもないファルージャ住民である。
産経新聞連載のコラムで曽野綾子が書いているように、イラクの実態がアラブの伝統的部族社会であるとすれば、ファルージャを実効支配する部族があり、ファルージャ住民の多くはその部族に属しているはずだ。その部族のリーダー層が武装勢力と融和的な関係にあるのも確実だ。でなければ、武装勢力は水や食料の供給も受けられない。その意味では、ファルージャで行われた残虐行為は、部族ぐるみ、住民ぐるみの犯罪だったとも言える。
アメリカ・イラク連合軍の包囲前に、退避勧告が行われ、住民の大多数はファルージャから離れた。それでもなお町に残った「住民」とは、はたして何者だろう? テロリストそのものではないにせよ、サポーターと見なされても仕方なかろう。
叙事詩的修辞がお好みならば、こんなのはどうだ。

邪悪の町ファルージャ 罰すべき神は沈黙を続けた
ゆえに人の手により焼かれ 破壊しつくされた
歴史に刻まれるその名 呪われた町ファルージャ