三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

業田良家「フォークソング」

もう何年も前の話だが、不覚にも涙ぐむほど感動してしまったまんががある。わずか20ページの作品で、こんな内容だ。
「ギター一本で喰っていきたい」という主人公・浜田雄太はストリートミュージシャン。押しが強くてケンカも負けない。ショートカットの彼女・ハルと安アパートで同棲していて、プロになるのが夢。
そんな浜田と生ギターデュオ「ボロロンズ」を結成した「キズちゃん」は、浜田とは対照的に小柄で優しい少年。常に頭や手足に包帯を巻いているが、それは彼が極端に傷つきやすい体質で、通りすがりの他人の心無い言葉でも出血してしまうから。キズちゃんの彼女の高子も同様の体質の包帯少女。
浜田の実力を見抜き、破格の待遇でプロデビューさせようとする獅子山は、ヒットメーカーとして名高いプロデューサーで、名前通りにライオンの頭部を持っている。(そういうキャラクターが当時、高級車のテレビCFに登場していたのだ) 獅子山が出した条件は、キズちゃんを切り捨てること。「あの子は暗すぎる。足手まといだろ?」
浜田が契約のため、獅子山の事務所を訪れているその時、キズちゃんは浜田を待ちきれずに独りで歌い始めている。事情を知っているハルは、キズちゃんに伝えることができない。浜田がサインしようとした獅子山との契約書に、ポタリと血が落ちる。浜田の額に傷が開いて出血している。
浜田は契約書を破き捨て、キズちゃんが孤軍奮闘しているストリートへと走る。「オレも血の出る体質だったんだ。キズちゃんとは違って、人にはそう見せないで生きてきただけだ。」
清く貧しく元気良くストリートで歌う「ボロロンズ」。「まだギターで喰えてるわけじゃないけど、オレたちギターで生きてます!」
以下の単行本に収録されている。機会があればぜひ一読を。

ゴーダ哲学堂空気人形 (ビッグコミックススペシャル)

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