三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「ねじまき鳥クロニクル」

ほぼイッキ読みで読了。予想通り底の割れた話だが、「海辺のカフカ」ほど、どうしようもない割れ方はしていない。自分が「カフカ」について書いたことは、ほとんどすべて「ねじまき鳥」にも当てはまる。広げた風呂敷を畳まずに終わる無責任さ、無用の残虐趣味。それに加えて、出来の悪いロールプレイングゲームみたいな不条理な展開。これが「絶賛」された結果、「カフカ」があり、「アフターダーク」があるのだろうと想像する。
ツッコミどころが多過ぎて、めまいがするほどなのだが、とりあえずは1点だけ。
ある土地を買うのに8千万円必要ということで、初めてお金の問題が登場する。主人公は失業者で家も借家で会社員やってた女房も失踪して、フツーに考えれば相当レベル経済的に困窮しているはずなのだが、ここまでの描写で貧乏ったらしい雰囲気はほとんど無い。
カイジばりに地下賭博場にでも行くのかと思ったら、宝くじを買う。「ハァ?」なのだが、主人公もすぐに気づく。「僕はこの宝くじに当たるはずがない」と確信する。当たり前だ、馬鹿! 「自分の能力を用いて」やらなきゃダメだ、「何か手段があるはずだ」と主人公は、宝くじを破り捨てて(それも無意味なのだが)、で、何をしたかと言うと、前にもやったように、新宿の雑踏を眺めに行く。

小説なのだから、何をどう書こうが作者の勝手だが、読者も含めて世間一般の最大多数の人間は、「切実に金を必要」になったら、座り込んで雑踏を眺めたりはしない。
それがあんたの「能力」と「手段」なんかい? 「三年寝太郎」か「わらしべ長者」じゃあるまいし。
だがしかし、他ならぬ「雑踏を眺めること」が主人公にとっての「手段」であり、主人公自身予想もしていなかった「能力」を開花させるキッカケだったことが数ページ後に判明する。
何日か雑踏を眺めていると、フラグがたって婆あが再登場。「おかねがひつよう? はい/いいえ」→「はい」で、主人公は男娼?にジョブチェンジ。さらにヒーリングのアビリティもゲット。電子音のファンファーレが鳴る。8千万ゴールドのとちをてにいれた!
小説ではなく、ロールプレイングゲームだと割り切れば、余計なことを考えずにサクサクと読み進められる。ちうか、そうでもしないとアホくさくて読めない。

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)