独り飯、独り酒の時には本でも雑誌でも新聞でもいい。何かしら活字が不可欠なのだが、この店だけは例外。周囲のざわめきに耳を傾け、「顔」を観ているだけで、なまじの小説を読むよりもずっとおもしろい。カウンター席が細長い「コ」の字になっていて、向かいに座っている客の顔が良く見える。それが実に味わい深い。
店を仕切っているのは60代の女性。さらに、80歳は越えていると思われる「先代」らしきお婆ちゃんがいる。母娘なのだろうか。他の女性たちもおおむね40代から50代。客も年配のひとが多い。店員も客も含めて店内の平均年齢が常時40歳を越している。時には50歳。自分がいちばん若いのではないか、と思う瞬間もしばしば。
若い連中の顔は、概してつるりんとしていてつまらないが、年寄りの顔は複雑でおもしろい。それまでの人生が刻みつけられているからだ。町工場の「社長」だろうか。現場から叩き上げの頑固親父然とした顔がある。酒が入るにしたがって、彫刻のように固かった顔が次第次第にゆるんでいく。見ていて飽きない。
映画にこそ、こういう「顔」を見せて欲しいのだが、めったに無いのが残念。数少ない例外がコレ↓
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