三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

写真集

仕事であれこれ考えて煮詰まると写真集を開く。まずはダイアン・アーバス。たちまち毒気にあてられる。アラーキー東京物語」を観て解毒。ちうか、別種の、より軽い毒で中和する。次に川内倫子「うたたね」。これもこれで毒のある写真だ。
「毒」は被写体じゃなく、撮影者にあるということが分かる。いや、正確には、善も悪も美も醜も清も濁も快も不快もごたまぜになった世界全体から、奇形や狂気のような毒を発見し、切り出してみせたのがアーバスアラーキーは何だろう? 情感とでも言うようなものか。それも観光地の絵葉書のような陳腐なものではなく、人妻の脱ぎたての下着のような、猥雑で露悪的で共犯感覚的な温もりをもった情感。アラーキー語る「エロス」はまさにそれだ。川内が切り出すのは美。日常の中に一瞬だけ出現して消えていく儚い美。それは時には稲光だったり、雲や虹だったり、死んだ鳩だったり。
そういや「センセイの鞄」DVDのジャケ写も川内だった。ベストセラー「世界の中心で愛を叫ぶ」のカバーにも使われていた。あのハイキーで、さりげなく視線を少しずらしたような構図が、まさしく「今様」なのだろう。