三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「誰か」

宮部みゆき「誰か」実業之日本社 を読了。相変わらずの宮部節は上手いとしか言いようがない。だが、ミステリー=エンターテインメントとしては長すぎ。かといって純文学として読むにはキャラクターの類型性に頼りすぎてる。1/4のページ数でまとめたら、相当の傑作だったかも。
「父と娘」というテーマをさまざまに変奏して重ねていくというのは、いかにも宮部らしいと着想と思うのだが。過去の「殺し」は唐突。伏線の張りようの無い事件だし、張らないのがリアリティーを担保するとの計算もあっただろうが。
姉妹の確執は、津雲むつみが今「YOU」でやっている連載を思い出した。この姉妹が一番怖い…という感想は、おそらく作者の目論見通りであろう。
ふと思ったが、例えば「世間で評判の美人姉妹」という存在を好ましく思うのはあくまで「男の思考」であり「姉のほうからせにゃならぬ」てな春歌的ファンタジーにまでたやすく脳内発展する。現実じゃ地獄だろう。当の「美人姉妹」にとって、そのような評価自体、自分たちの人生に相当レベル確実な「危機」を招きよせる凶報に他ならないのではないか。
ISBN:4408534498