三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

明日、月の上で

平安寿子「明日、月の上で」徳間書店 を読了。平読み5冊目。これにて全編読了? 惚れた男の手がかりを追って、たどり着いた田舎の温泉町のラーメン屋でバイトしつつ、全共闘崩れが経営するストリップ劇場のおねいさんの自伝執筆を手伝うヒロイン26歳の物語。平としてはフツーに傑作。ちうことは、世間一般じゃ「かなりの傑作」ということになる(笑) 読んで損はないよ。
本筋とは直接関係無いのだが、惚れた男のこどもを産んで育てることができれば、恋愛なり結婚なりが成就しなくても「勝ち」というのは、男には絶対不可能な成功法であろう。女性の社会的地位も収入も相対的に低かった時代においては、「お妾さん」がせいぜいだっただろうが、現在日本においては、自分で選択した男性の種でこどもを産み、当該男性とは無縁のまま、高い社会的地位と収入を維持していく「未婚の母」も珍しくなくなるのかも。
ジョディ・フォスターやね。あるいはローマ兵を捕虜にして子種を搾り取ったというアマゾネスの再来か。男にとっては索漠たる事態だが、そもそも男にとってのこどもは「結婚」とか「認知」といった社会的フィクションとしてしか成立しない関係対象なのに対して、女にとってのこどもは文字通り「お腹を痛めた」実存的対象である。「父親が誰か分からない」ことがあるとしても、母親はまぎれもない自分自身である。女がそんな絶対的関係を盾に「男」を排除してきたなら「男」側に勝ち目は無い。
ISBN:4198615993