三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「歳月のはしご」

アン・タイラー「歳月のはしご」文春文庫 を読了。
平安寿子が著者紹介で「アン・タイラーに触発されて小説を書きはじめる」と繰り返しているので、興味を惹かれて読んでみた。この「歳月のはしご」は、どんぴしゃ、平安寿子「グッドラックららばい」の種本。というか原曲。というかインスパイア元。
どちらも平凡な主婦が突然家出し、違う町で違う生活を始める、というお話。主婦出奔の原因が、生活苦でも夫のDVでも不倫でも無く、さほどの不満もなさそうな生活から、さほどの理由もなくふらっとドロップアウトしてしまう、というところが一緒。ちうか、この「さほどの理由もなくふらっと」というところが、平がタイラーからインスパイアされた最重要ポイントだったのだろう。平凡人が平凡な生活の中で、いかに非凡なドラマを演じているか、というテーマは、平作品の基調をなしている。
タイラーには悪いが、平のほうが数段小説として面白い。よりドラマチックで、よりユーモラスで。同じモチーフを見事に換骨奪胎している。この手の話は本質的に、アメリカを舞台にするよか日本を舞台にしたほうが面白いのかもしれない。日米の相違点…「主婦」の社会的立場とか、人間関係の濃淡とか、「自我」の強弱とか、要因はさまざまだろうし、もちろん、日本人読者に限っての話だと思うが。
で、間抜けにもたった今気がついたが、「平安寿子」は「アン・タイラー」のもじりじゃん。江戸川乱歩じゃん(笑)
ISBN:4167527839