三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

映画「自虐の詩」

佳作だった。増築改築の連続で迷路化してしまった温泉旅館のような原作まんがを、一本の映画としてまとめ上げた脚本力に感心した。全体として「嫌われ松子」の廉価版みたいな構成に「下妻物語」の女の友情を加味したようなお話だが、ハッピーエンドがよろしい。
中谷美紀がすばらしい。「インド旅行記」を読んだ後だから、「なるほど松子がインド前で、自虐がインド後か」などと想像し、興味深かった。そういや「松子」のさらに前が「電車男」か。「電車」じゃちょいとフケた美人さんちう印象だったが、一作ごとに長足の進歩がうかがえる。「松子」でコメディエンヌに脱皮したところから一回り大きくなった。
阿部寛も良かった。「現在」のパンチパーマで無表情な暴力キャラで笑いをとっておいて、「過去」の長髪美青年純情ヤクザで「ええ男やなあ」とオバチャンたちを胸キュンさせる。
舞台は過去が気仙沼。続いて東京のどっか。現在が大阪・西成。ギャグに紛らわされているが、貧乏で馬鹿で上昇志向の欠片も無い下層社会の救いようの無さが細部に渡って「これでもか」ちうくらい徹底的に描かれる。(加えて悪趣味) 「貧しかったが夢があった」と戦後の東京の下層社会を美化した「ALWAYS」と対照的だ。