川上弘美の最新長編。好きな作家である。で、自分はほとんど毎日大型書店に足を踏み入れている。にもかかわらず、新聞書評(日経だった)で「あ、もう出てる」と初めて知って捜しに行った。
環境に安住し、世間一般の「読書人」が日常的にやっているだろうところの新刊案内のチェックをサボっているからだ。テレビCFのようなパッシブな情報伝達は、「本」においては有り得ない。それどころか、毎日書店の平台を眺めている程度では取りこぼす新刊がいくらでもある、ちうこと。それはそれで構わない。
さっくり読めた。たわいの無い話ながら、川上弘美風味満点。色事というか「エロ」も含有なのだが、日常を壊すまでの激しさはなく、日常にそれなりの彩りを与える落ち着いたもの。自分の中の「三十代独身女性」は「究極の選択だったら、絶倫の俺様よか半インポの優男よ」と託宣した。そりゃ有難い(w
ラストも手堅い。上手い。そういや、川上の恋愛モノでハッピーエンドって無かったんじゃないか? 人形に戻ったり、「異界」へ去ったり、相手がそもそも年寄り過ぎて死んでしまったり。その点、これは安心して読める。
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/04/01
- メディア: 単行本
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