三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「ベルヴィル・ランデブー」

ベルヴィル

http://www.klockworx.com/belleville/
テアトルタイムズスクエアにて単館上映中のフランスのアニメ映画。嫁さんこどもらと一緒に観てきた。なんちゅうか、予想の斜め上をぶっとんだ作品だった。
舞台はフランスのどっか田舎の村。婆さんと孫が二人で暮らしている。孫の両親は交通事故で亡くなった。残された孫を婆さんは溺愛している様子で、孫はあからさまに過保護で肥満児。家に閉じ込められて退屈な孫に、婆さんは子犬、鉄道模型を買い与える。最後に買い与えた三輪車に孫は夢中になる。そして歳月が経つ。成長した孫は自転車レーサーとなりツールドフランスに出場するが、レース途中で謎の男達に拉致される。孫の行方を追って、婆さんと犬は大都会ベルヴィルにたどり着く…てなお話。
これだけ読んで、「フランスアニメ」だとして、どういう作品を想像するだろう? おしゃれで渋くてエスプリが効いてちょと泣かせて、と。「絵」はノルシュテインジブリの中間ぐらいじゃないか? と。じぇんじぇん違った。
実におしゃれで渋くてエスプリが効いてちょと泣かせる内容なのだが、それ以上にグロテスクで悪趣味で悪夢的なのだ。絵がとにっかく凄い。キャラクターのデフォルメ、動き、存在感など、ディズニーもジャパニメーションも及ばない「境地」に達している。
この「ベルヴィル」はニューヨークのパロディーなのだが、そのことを最初に明示するのは、小錦のごとくデブデブに太った自由の女神像だ。街を行き交う車はバカでかいアメ車で、歩道を歩く連中もソファみたいなケツをしたデブばかり。デブデブデブの大洪水。「フランス人のイメージするアメリカ」のパターンの一つなのだろうが、ここまで極端なら笑うしかない。
主要キャラはさらに異形だ。画像の自転車の先頭が成長した「孫」。ワシ鼻の上、極細の上半身と対照的に筋肉盛り盛りのぶっとい足という、軍鶏みたいな体形。2番目が「謎の男」だが、上背と肩幅がデフォルメされて、畳を背負ったような体形である。最後尾が婆さん。ギョロ目の短躯。よく見ると分かるが、左右の足の長さが違うらしく、片足に厚底の鉄靴を履いている。あえて詳しくは書かないが、婆さんの前に乗っている三人のこれまた婆さんたちが凄い。宮崎アニメもびっくりの大活劇の主役となる。乞うご期待(笑)
けして万人向けじゃないが、フランス映画が好きなひと、アニメが好きだが昨今の「萌え」全盛にはついていけないひと、グロテスクで悪趣味で悪夢的な映像が好きなひとには、一見を強くお薦め。ビデオでも十分堪能できるから、それまで待っても良いかもね。