三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

富士日記

武田泰淳の奥さん・百合子の日記でエッセイの佳作として世評が高い。上巻を読了。
あれこれおもしろいのだが、昭和40年代当時、まだ珍しかっただろう女性オーナードライバーの実体験記としても貴重。百合子は夫と娘を乗せた車を運転し、東京と富士を何度と無く往復している。富士近辺も精力的に走り回っているのだが、交通事故現場をしょっちゅう目撃している。百合子自身も同乗の夫ともどもトラックの追突を食らって、後遺症が残ったりしている。
事故の伝聞も多い。それも、癲癇持ちの小学生が交通事故死して賠償金が入って親はかえって喜んだ、てな、現在日本ではよほどのDQN以外まず考えられないような話。
何よりも道が悪かったのだろう。歩道もろくに整備されておらず、歩行者や自転車のすぐそばを車がフルスピードで抜けていった時代。車の性能も劣悪だった。その上、ドライバーの運転マナーも悪かった。三鷹進歩史観に与するものではないが、自分自身のこども時代から現在にかけて、自動車をめぐる状況は確実に進歩向上した。運転マナーも改善された。