三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

人生と投資のパズル

角田康夫「人生と投資のパズル」文春新書を読了。相場格言に象徴される投資家の心理的側面を織り込んだ経済理論と称する「行動経済学」を紹介するもの。あれこれ数式で説明されると「そうかな?」と思うが、現象を後付けで説明するための数式をひねり出している、というのが実際のところだろう。現にこの本でも言及されているように、アメリカで通用する数式が、日本では通用しない。文化的背景の相違によって、投資家の行動様式が異なるからだ。
また「3つの箱問題」はどうにも納得がいかない。クイズ番組で、ABCどれかの箱に当たりが入っていて、出題者はどの箱が当たりか知っている。回答者がAを選んだ後、出題者はBを開いて外れであることを示した。回答者がAを選び続けるべきか? それともCに乗り換えるべきか? というもの。正解は「Cに乗り換える」で、その理由もキッチリ計算されている。
納得いかないのは、出題者側と回答者側が互いに相手を出し抜こうと行動する可能性が考慮されていないからだ。回答者が現に当たりを引いているのを外させようとして、出題者が「確率計算的には乗り換え有利」と罠をかけている可能性だ。その可能性を考慮すれば、「Aを選び続ける」のが正解だろう。つまり、確率の問題ではなく、心理戦の問題なのだ。
相場は計算じゃない。いや、大部分は計算なのだが、最後の最後で勝敗を分けるのは、経験に裏付けられた直感的な洞察力。いわゆる「勘」だ。
相場格言を理論的に裏付けようという試みとして評価すべきだろうか? 理論が得意な人々(=理論を持ち出されると弱い人々?)に相場格言を納得させるためには有効だろうが、逆に言えばそのくらいしか使い道が無い。で、相場格言を身につけるには、相当回数&相当レベルで失敗してみなければダメ(笑) 痛い目を見ないと分からないのが人間なのだよ。