三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

Kindle事情

角川グループ、Amazon.com(アマゾン)と「Kindle(キンドル)」向け電子書籍の配信契約を締結
角川書店アスキーメディアワークスエンターブレイン角川学芸出版富士見書房メディアファクトリーなどのグループ傘下の全出版社が契約を締結した。契約では、アマゾンが今後日本で発売するキンドル上で、グループ傘下の出版社が提供する電子コンテンツを販売するほか、同サービスが対応しているPCや各種スマートフォンなど、すべてのデバイスに配信するもの。「価格決定権」はアマゾン側が持つ。両社は、約1年にわたり交渉を続けていた。 大手出版社で契約したのは同グループが初めてとなる。

新文化」より転載。
http://www.shinbunka.co.jp/news2012/03/120301-01.htm
ちょっと前に「Kindle四月日本上陸」てな記事が日経に出て、そこで具体名が出ていた大手版元の一つなので、「ああやっぱり」なのですが、最大のポイントは、

「価格決定権」はアマゾン側が持つ。

というところ。Amazon対版元のおそらく最大の争点だったのを、角川さんは譲ってしまったらしい。
(と、ここで大急ぎで断わっておきますが、三鷹がブログその他で書いてることはあくまで三鷹個人の感想なり意見であり、特定版元やまして業界を代弁するものじゃありません)
書籍や雑誌は新聞などとともに「再販制」が適用されていて、独禁法の例外となっています。再販制について興味があるかたはwikiなりなんなりしてください。要点は小売価格をメーカーが決められること。これを「定価」と称します。本にも雑誌にも「定価」が表示されており、ジャストそのプライスで読者に販売することが書店やコンビニに求められてます。
電子書籍においても同様に「再販制」を適用してほしい、というのが版元側の願うところ。その「願い」の結果、現在電子書籍を配信しているパピレスやリーダーストアその他の電子書店においても「定価のようなもの」が存在していて、どのお店でも同じタイトルは同じ値段で売られています。
その「願い」は公正取引委員会にも伝わっているはずですが、公取電子書籍に「再販制」を適用しない方向に動いているらしい。紙の書籍や雑誌の場合も「独禁法の例外」。あくまで「例外」だから。
で、今回の角川さんの譲歩により「電子書籍にも再販制を!」との版元の主張を公取が認めてくれる見込みはゼロになりました。「業界全体の希望ってわけじゃないんでしょ。角川さんは違うもんねえ」と公取に言われちゃう。
次に何が起きるか? 二つのケースが想定されます。
ケースA:版元の大多数が角川同様にAmazonと契約する
ケースB:版元の大多数はAmazonと契約しない
ケースBの場合、Kindle日本版では角川グループの電子書籍しか買えない。ソニーリーダーその他のデバイスではそれ以外の版元の電子書籍も買える、という状況になり、両者が併存する。そこから先はいろんな可能性が考えられますが「電子書籍市場」は現在のレベルからさほど広がらないだろう、と三鷹は予想します。
ケースAの場合、Amazonは当然ディスカウント販売をします。他の電子書店も「定価のようなもの」を守っていたら殲滅されるだけですので、Amazon同様の契約を版元側と結び直し、Amazonと競争することになります。結果…具体的には書きづらいのですが、要するに現在のアメリカのようになるでしょう。「電子書籍市場」は最大アメリカレベルまで広がるだろう、と三鷹は予想します。