三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「ダ・ヴィンチ・コード」

「ベストセラーには手を出すな」は信条ではなく「野生のカン」。言わば鬼太郎の妖怪アンテナのようなもので、駄作に敏感に反応する。で、避けてきた作品の一つなのだが、「アーサー王」がらみで読まざるを得なくなった。………結果、駄作アンテナの信頼性が実証された。
ちうかさあ、ぶっちゃけ「おもしろかった」っすかあ? >読んだかた
サスペンス/ミステリにしては単調過ぎるし、パズル/暗号小説として楽しむには肝心の暗号が物足りない。欧米じゃ「バチカンが圧殺してきたキリスト教の裏面史」てな読まれ方だったらしいが(CNNEEに載ってた)、わしら異教徒にも分かりました? 自分としては一番期待外れだったのが実に「そこ」だったんですが。残念ながら、往年の半村良ほどの「おもしろさ」すら得られなかった。
キリスト教の女性的側面」を衝くなら、確かに「マリア」は鍵と思いますが、だったらば「マグダラのマリア」よりも「聖母マリア」でしょ。魔女狩りその他で「女性」を圧殺したバチカンは、同時に聖母崇拝の中枢でもあったわけで、聖母マリアにはキリスト教以前の女神信仰が習合されてます。そのキャラクターが単なる「聖なる母」であったなら、「母」と「娼婦」が同じ名前である必要は無いわけです。
神話伝説のキャラクターの多義性それ自体が、実に「おもしろい」テーマである一方、「歴史上の人物としてのイエスは、実際はどんな人生を送ったのか?」てなテーマは、相対的に「つまらない」。あ、もちろん「異教徒としては」、ですが(w
あと「血統」というのも別に「おもしろく」は無いよね。キリスト教徒としては、神と人とは絶対的に隔たっていて、「神の子孫」という概念自体、論理矛盾でびっくり仰天なのかもしれないが、異教徒たる日本人は、すべて天津神国津神の末裔。同じ「神」でも、太陽の女神の直系である天皇家は別格と思いきや、源平藤橘すべて天皇家の親戚。要するに日本人全員が「神の子孫」なんすから。

ダ・ヴィンチ・コード〈上〉

ダ・ヴィンチ・コード〈上〉