三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

「喜劇新思想大系」

山上たつひこ「喜劇新思想大系」完全版上巻 を買う。
この作品は、言うなれば「まんがにおける表現規制の歴史的資料」だ。70年代に出た青林堂版6巻本は、いわゆる差別語やら不快語が連発されている。ギャグもエログロ全開で「危ない」ネタがてんこ盛りだ。その後、まんがにおける表現規制が強化されたのに伴い、判型を変えて復刊されるたびに、ネームも絵も、さまざまに訂正削除された。一番規制が厳しかった時代には、オチのコマそのものがベタで塗り潰されて意味不明となるケースさえあった。
自分の手元にあるのは、青林堂6巻本と、今回買った「完全版」のみで、途中の復刊本は無いので、記憶を頼りにするしかない。青林堂本=完全版ならば単純明快だが、そうじゃない。「だったら完全版とは言えんだろう」とのツッコミも予想できる。幻の1篇だった「日本春歌考」が今回初めて収録されたというだけでも、「完全版」を名乗るに足る快挙なのだが。(後で調べたら、84年に双葉社から出た復刊本に収録されたらしい。自分は見てない)
表現規制の解禁状況について概略すれば、
青林堂版○→復刊本×→完全版○ が数的には一番多いのだが、
青林堂版○→復刊本×→完全版× という例もけっこうある。
青林堂版×→復刊本×→完全版○ という例もあった。
老婆が全裸で踊るシーンで股間にちょぼちょぼ描かれいていた陰毛が、律儀に製版段階で消されていたらしい。完全版で初めて復活した。エロでもなんでもないのだが、「ヘア一本でもダメ」とされた時代はそんな昔のことではない。
青林堂版○→復刻本○→完全版× という例もあったのには驚かされた。幼女云々のネームで、ペドフィリア関係に対する近年の厳しい規制の表れともいえよう。
ISBN:493913816X