三鷹食堂日記帖

飯食い酒飲み自転車をこぐおやぢの日常。MT車大好き。

町探訪「王子本町から滝野川2丁目へ」

 王子本町と石神井川対岸の滝野川2丁目の住宅地、商店街を散策する。古いお寺、細い路地だらけの住宅地、川があり、墓地があり、鬱蒼と茂った緑地があり、昔の赤レンガの醸造試験場の跡地がありと、異界じみた不思議なエリアである。

 一番の異界は「北区役所」かもしれない。大通りに面した建物に「第2庁舎」とあるので「王子が第2で赤羽が第1?」とか思っていたのだが、違った。「王子本町」なる、そこそこ広いエリアの中に、第1から第5、さらに別館まで、いくつもの庁舎が点在していて、間にお寺や住宅やマンションや町工場がある。「菊地の靴」なる由緒ありげな靴屋もある。何で区役所がこのようなことになっているのかは不明。窓口をいくつも訪ね歩く「異界巡り」を強いられる北区民がいるのではないか、とちょと心配である。

 石神井川を渡って、対岸の滝野川2丁目へ。地元の「ばんば商店街」は、松本零士のキャラをあしらった門があり、わびれ感満点。「飛鳥山温泉」なんて銭湯がある。このあたりは、とにもかくにも道が狭い。区画整理の痕跡ゼロ。東京の住宅地とは思えんくらい。ちょっと出たところを走ってる明治通りの歩道よりも道幅が狭い車道がある。クルマが入れん路地もそこかしこに。

 石神井川に向かっていったどん詰まりの地所には、超古いビルに、洗濯物などはためき、人がけっこうな数住んでいる気配だったりする。東南アジアの都市の場末みたいな感じ。スラムとまでは言わんが。

 このエリアの中心的存在が「正受院」。石神井川に落ちる「不動の滝」が名所だったらしく「たきふどう」と変体仮名で記した大きな古い石の道標が道路に立っている。今日はお盆の前日ということで、参道をクルマが何台も出入りしてた。ギリチョンの狭さなので寄せたりバックしたり大変。

 奥まで参拝してみる。水子供養の納骨堂が二つ。小さな卒塔婆が無数並べられて、おもちゃやら菓子やらがたくさん供えてある。つまりはそういう「聖地」なのだ。石神井川っぺりの、日当たりの悪い低地湿地で、あの世にもこの世にも行き場のない、哀れな水子の霊が、寄りついて溜まり、こごっているのだろうか。こここそが、安息の地であることを祈りたい。

 参拝客のクルマのナンバーは「大宮」だの「逗子」だの「袖ケ浦」だのと関東周辺が目立つ。あれこれと難しい事情で、せっかく授かったこどもを水にせざるを得なかった人々。そんでも「山の手のインテリエリート」みたいに単に「無かったこと」にはできずに、ちゃんと供養して、盆や彼岸には墓参している。そんな哀しい周縁の人々の、人間としての「温かさ」を感じた…と書いておくか。