同じ東京でも住む場所によって生活費がぜんぜん違う。それを痛感したのが、ちょうど一年前、自宅のリフォームに伴う、一か月半ほどの港区生活体験だった。ちなみに自宅は最寄りのJR駅が「赤羽」の板橋区。「北区赤羽」なるまんがの著者の実家の近く(だと思う。具体的には知らんが)。
土地の値段が違うから、賃貸家賃その他の住居費が違うだろう、というのは分かってた。それと、赤羽・板橋界隈の物価が、それ以前に住んでた中央線沿線よりも、はっきり安いことにも気がついていた。
でも、港区での生活費が、ここまで高いとは思わなかった。まず、日用の生鮮食料品。これが1割から2割高い。外食の店…町中華や洋食屋などが、2割から3割。飲み屋に至っては1.5倍から2倍のお値段だ。港区界隈にしか無い、流行の小洒落た店だったら分からんでもないが、ごくフツーの居酒屋で、ざっくりそのくらい違うのだ。
大卒リーマンの生涯賃金が2億円として、生活費が2割違えば4000万、3割違えば6000万の差が生じる。勤務先の会社が都営地下鉄三田線の「神保町」(千代田区)にあるとして、そこから北へ7駅の「新板橋」(板橋区)に住むのと、南西へ7駅の「白金高輪」(港区)に住むのとで、生涯に6000万円の差が生じるとしたら、どちらをチョイスするのか、ということ。
自分は田舎育ちで、大学から東京だった「上京組」だが、東京生まれの連中の方が意外とこうした地道な「格差」に鈍感であるかもしれない。「家賃の差」くらいにしか思っていない。あるいは「山の手のお屋敷町には金持ち、下町のアパートには貧乏人」という、戦前以来の型通りのイメージ。同じ会社で同額のお給料を貰っていても、日々の暮らしで出ていく金額が、ハッキリ2割3割違うという、実感としての「格差」を知らんのだ。実家が板橋区にあるか、港区にあるかにかかわらず、都内で「別エリア」に引っ越すという契機が皆無に近いからだろう。
これから、地方から東京へ出てこようとする若い衆は、重々考慮したほうが良いだろう。もちろん「生活費の高い港区でステイタスの高い人生を満喫する」という選択肢も否定はしない。
ああ、それと「東京で住みたい町は?」と聞かれて、「吉祥寺」「下北沢」ならまだともかく「六本木」と即答するのは、正直言って相当な取材不足だと思う。